2021.07.27 / 最終更新日:2022.02.01
子どものおもちゃは、様々な種類があります。
こちらの記事では、前回、音がなるおもちゃと聴覚の発達に着目してみましたが、今回は視点を変えて、おもちゃの「手触り」が何を伸ばすのかに着目してみようと思います。
触覚は、皮膚を通して人が感じる感覚のことをいいます。
大人でも、お気に入りの手触りや、暑い時期になると冷たい手触りのシーツやお布団が恋しくなる人も多いでしょう。
触覚は、触ったり、触られたりすることを感じる感覚のことで、皮膚を通して感じます。
お湯に触れた時の熱さ、プールに入った時の冷たさ、人に抱きしめられたときのぎゅーっという感じなど、そこから子どもが得るものは、単なる手触りだけではなく、実はとても多岐に渡るのです。
お子さんのなかには、「洋服のタグがチクチクしている」などとすごく嫌がったり、特定の素材を着ることができない子もいると思います。
その程度や種類は、非常に個人差があり、成長とともになくなっていくものもありますし、逆にはっきりとしていくこともあるかもしれません。
お子さんの好きなもの、嫌がるものを観察して、その傾向を見てみることも触覚の発達を見ていく上では非常に重要な情報となります。
そして実はこの「手触り」も、前回の記事でお伝えした「感覚統合」がなされていくものなのです。
一般的にはあまり関係がなさそうと思われがちですが、触覚の感覚統合が進んでいくと、情緒の安定につながります。
自分の好きな人(家族など)に抱っこされた時のぬくもりや、ぎゅーっという圧迫感、心地よさが、安心につながり、情緒の安定へとつながっていきます。
また、パニックを起こしたり、子どもが泣き出した時に、抱きしめたり、体をさすったり、手をつないだりということをして落ち着く子も多いかと思います。
例えばこの時に「痛かったね」「怖かったね」「楽しかったね」などと、周囲が声掛けすることで、子どもはその耳から入ってくる言葉と、自分の気持ちに共感してくれたこと、自分の今の気持ちは「痛い」というものなんだ、という認識を持ち始めます。
このように、触覚だけでも情緒の安定にはつながりますが、そこに付随する大人の声掛けなどと結びついていくことで、さらなる情緒の安定へと繋がっていきます。
針がチクッと刺さってしまったり、熱いお湯に触れた瞬間に、とっさに手を離すことや、泣き出すことがあるかと思います。
また、何かが皮膚についていると、変な感じがしてとても気になると思います。
この様な、皮膚の感覚を通して危険を感じた時に、自分の身を守る働きがあります。
例えば、虫が皮膚を刺そうとしている時に気がついて払いのけたり、不快と感じ皮膚刺激があるときにはとっさに避けることもあるかと思います。
このようなはたらきを、触覚防衛反応といったりしますが、これは将来的に情緒の安定や対人交流などの発達に影響してきます。
かばんの中から手触りだけでお弁当箱を取り出したり、触って帽子と靴下を区別したりするようなことが、私達は自然にできているかと思います。
これも、触覚が発達してからできることで、紐と布のような素材の違いを識別したり、丸いブロックと人間の形のブロックを判別したりします。
わかりやすいのは、バラエティなどでよくある手触りだけで箱の中に何が入っているか当てるようなゲームがあります。
ただ、子どもが大きくなっていく過程でこの識別能力は非常に重要になってきて、衣服の着脱や、自分の荷物の整理など、小さな頃でも自分で行う必要があるものです。
これらは、手の器用さにも繋がってくるところで、トレーニングと識別して正解したり、間違ったりする経験を積み重ねることで感覚統合されていくものです。
触覚の発達において、非常に重要な働きとして「自分のボディイメージを持つ」ということがあります。
私達が無意識に、体の大きさや、長さなどを把握して、天井が低ければかがんだり、ジャングルジムなどの穴を通るときなどに体を低くしてうまく通ることができるのは、成長の過程で自分のボディイメージを持つことができているからです。
ここがしっかりと発達していないと、うまく歩いたり走ったりすることができなかったりして日常生活に支障がある程度から、ダンスやマット運動が苦手、くらいの程度までばらつきはあるものの、「自分の体の地図を把握していない」という状況が起きます。
これは、人の皮膚が、自分の体と外の世界との境界線であり、触覚を通じて、私達人間は自分の体の輪郭をつかんでいっているからです。
きちんと自分のボディイメージを把握していくと、自分の身の回りの環境を確認して
自分がどう動く必要があるか、などの関係性の把握に繋がります。
少し難しい話になってしまいますが、感覚統合には段階があり、そのスピードや、1つの段階の層の厚みも、子どもに寄って異なります。
イメージをお伝えすると、全ての感覚統合の基礎となる、「姿勢を保つ」「バランスをとる」などのことができてから、やっと次の段階である「自分のボディイメージを持つ」という段階に行くことができます。
その上で、「目で見たところに正確に手を伸ばす」「形や音を区別する」、などの段階があり、最終的に感覚が統合されていき、自分の力で(親の手を借りなくても)日常生活を送っていけるように成長していきます。
感覚統合の土台となる段階の感覚機能の発達が抜け落ちていたり、歪んでいたりすると、その影響は一番上の感覚統合まで影響があると言われています。そのでこぼこが、日常生活を送る上で支障が出てきて、他者の支援を必要とするレベルになると、発達障害の診断が出たり、診断は出なくとも専門家にアセスメントをしてもらい、必要な感覚刺激を入れていくなどの対応が必要になってきます。
などがあります。
これらは、
などの対応をすることでかなり生活で困ることは減ってきますが、本人の得意不得意の見極めを行い、必要があれば適度に感覚刺激を取り入れることで、気にならないレベルになることもあります。
感覚統合は十分に刺激が取り入れられると、その段階を卒業していく時がやってきます。
たとえば、指先の動きが鈍くて、うまく手を使えていない子がいるとします。
そういう時に、触覚の異なる様々なおもちゃで遊ぶようにしたり、片栗粉にお水を混ぜたものに手を浸して、自分の手が冷たい何かに包まれている感覚を経験させたりします。
ビー玉などのたまがたくさん入ったトレイに手を入れたり、スライムで手に何かがくっつく感覚など、様々な経験していくことで少しずつ、指先の感覚統合が進み、次の段階の感覚統合へと自然と移行していくのです。
1日のほとんどを寝て過ごすこの時期は、視力はまだ弱いが、顔の近くのものをじっとみつめたり、自分の手足を眺めたりします。
眠りにつく時に顔をうずめたり、口にいれてハムハムしたりするのにちょうど良い、タオル生地の人形があります。
人形であることで、顔があり、視覚が未発達な低月齢の赤ちゃんが本能的に安心感を覚える「顔」があることも重要なポイントです。
肌に触れる時の心地よさを重視したタオル素材だったり、よだれがついても何度も洗って使うことができる素材を使っていることも要チェックポイントです。
そばに置いて、たまに触れることで、赤ちゃんにとって「快」の刺激を与えることができます。
首が据わる時期までは、赤ちゃんのおねんねスペースとして使うこともできる、プレイネストというものがあります。
浮き輪上のクッション担っていて、成長に応じて赤ちゃんの楽しい遊び場になるものです。
素材も様々で、この中で過ごすことで、赤ちゃんが自分の動ける範囲を境目を学習したり、圧迫感が心地よさを与えたりします。
また、子どもが大好きな動物や、乗り物などのペイントがされていることも多く、視覚刺激にもなり、子どもの発達を促すことができます。
6ヶ月ころからは、周囲をぐるっと囲まれていることで、自分の目の前の遊びに集中し、姿勢が安定しやすくなります。
夢中になってゴロンと転がろうとしても、クッションが対応してくれます。
また、12ヶ月ころになると、お気に入りのおもちゃでいっぱいにして、その中でおしゃべりしながら遊べる、自分だけのスペースにすることができます。
このブログで前回もご紹介した「布絵本」というおもちゃがあります。
このおもちゃがとても優秀で、両手で遊ぶことが始まった時期のおでかけだけでなく、おうちで遊ぶときも子どもの発達に良いところがたくさんあります。
それぞれのページは、にぎりやすい動物の耳、触るとパリパリ音がするものもあります。
見かけはおなじようなページでも、触ると様々な手触りであることから子どもは勝手に学習していきます。
また、ページを捲ると色々なシンボルが出てきて、はじめてのお出かけ先で不安になっても「大丈夫だよ」と勇気づけて安心感を与えることにもなります。
触って楽しむシンプルな触覚遊びから、赤ちゃんが自分の手を動かしてページをめくったり、おしゃぶりすることでも口周りの触覚の発達が促されます。
色や形、触った時の感覚が異なるボールのセットなども、触覚を発達させるために非常に大きな効果を発揮します。
手に伝わる様々な刺激を楽しむこともできますし、掴んだり、投げたり、弾ませたり、体を動かす遊びにも繋がります。
単純ないろいろなかたちのボールだったりもしますが、でこぼこがあったり、ツルンとしていたり、ザラザラしていたり、手触りの違いで、物を識別する能力も培われます。
また、複数人で遊ぶことによって、対人関係を築く効果も期待することができます。
つかまり立ちから、「立っち」の時期には、あるけるようになり行動範囲も広がったり、全身のバランス感覚がだんだん身についてきて手や指が自由に使えるようになります。
ベビーウォーカーは、歩き始めのお子さんをサポートするものになります。
物をのせて買い物ごっこをしたり、お人形をのせて運んだりすることもできます。
ベビーウォーカーを使うことで、どのくらいの強さで握ったら安定するか、どのくらいの強さで押したら転倒してしまうか、などを学んでいくことができます。
こうして、言葉では説明することが難しい「加減」というものを習得していくことになります。
同時に、自分の体の使い方や、一歩どのくらいかなど、ボディイメージを持つためにも大きな効果が期待できます。
大人の行動に興味を持ち、日常の道具を使って真似をしてくる時期。
ほめられたことや面白かったことを繰り返しするようになる時期でもあります。
室内ジャングルジムは、掴んだり、握ったり、滑ったり、様々な触覚を体験することができます。
自分の体を持ち上げるにはどのくらいの力加減が必要か、どんな姿勢だったらすべり台から転げ落ちないかなど、自分の体の使い方も学んでいきます。
実はお世話人形も、触覚を発達させることができるおもちゃです。
服を着せ替えたりするときに、マジックテープを剥がしたり、ゴムを伸ばしてスカートを履かせたりすることがあります。
実際に自分の服を着脱するときとは異なりますが、どのくらいの力加減が良いかを習得していったり、マジックテープのザラザラに触れたり、つるつるしたお洋服の手触りの違いを学ぶこともできます。
また、抱っこひもでお人形を抱っこすることもできると、自分の体に少し重みのある人形をくっつけることについても、快、不快の反応があると思います。
触覚の発達を促したいときには、素材、手触り、どのくらい肌に圧力があるかなど、様々な観点でおもちゃを選ぶことができます。
その際に、プラスでどんなことの発達が促されるかを考えながら選ぶのも良いかもしれません。
ぜひお子さんの好きなおもちゃを探してみてください。
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